髙橋くんは自分がかわいいことを分かっていないようだ。
今日父の家から帰るとき、隣で元気にはしゃぎながら歩いてる髙橋くんに「光治は本当にかわいいなあ。」と言ったら「そうかなあ?」って、かわいいのを自覚してないようだった。あの無意識な感じにたまらなく興奮して、少し強引に抱き寄せた。髙橋くんは自分がそんなにかわいいのかというような顔をしていた。
あの無邪気な様子とか、塩っけのある顔とか、あのよたよたした歩き方とか、本当にたまらない。
今、「兄ちゃん大好き」と抱きついてきた。かわいくて仕方ない。
「今日も楽しかった?」と聞いたら「楽しかったよ!」と答えた。どうやら、しばらく雨が降っていて外に出れなかったけど今日久しぶりに散歩に行けたのが楽しかったらしい。
「明日ももっと遊ぼうね!」って言ってる。
日記を書くための青ペンを、髙橋くんにあげた。
自分の物が増えたのが嬉しかったみたいで、「僕がもらっていいの?ありがとう!」と言って嬉しそうにマーカーで名前を書いてた。
子供特有のあどけない字を見て、もっとかわいく思えた。褒めた。喜んでた。
こんな生活ができて、僕は幸せだ。
今日も日記を書いてもらおうと思う。
三月二十八日
さつき、兄ちやんに靑いペンをもらひました。
実は、ぼくは文の書き方を少しわすれてしまつた。
だから、まちがつてゐるかもしれない。
かんべんしてください。
今日はひさしぶりに散歩に行きました。
この間まで雨で行けなかつたので、とても樂しかつたです。
明日も何か樂しいことあるでせうか。
おやすみなさい。